データで見る事業承継の現状Ⅱ 親族内承継の問題

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承継二郎
親族内承継の場合に、どのような問題が大きいのですか?税金の問題ですか?
貝井
税金の問題もありますが、後継者の素質・能力が一番の問題です。

 

「親族内承継の問題」のデータ

中小企業庁の『中小企業白書』の「規模別の親族に承継を引き継ぐ際の問題」によると、以下のようになっています。

親族内承継にあたって、特に問題がない、と答えている企業は3割前後しかありません。

7割前後の会社はなんらかの問題になりそうなことを抱えています。

 

では、その具体的な問題とはなにでしょうか。

ここでは、資産税、贈与税の負担は、3-4割程度で第2位です。

圧倒的第1位は、「後継者の経営者としての素質・能力の不足」で、6割に企業が不安を持っています。

第3位以下は、経営における公私混同、本人から承諾が得られない、役員・従業員の士気の低下、親族間での争い、と続きます。

「親族内承継の問題」のデータからの考察

親族内承継においては、経営者は、税金ではなく、圧倒的に後継者について悩んでいることがわかります。

顧問税理士に事業承継を相談したが、税金の話しかしてくれないので、私のもとに相談に来た、という経営者さんが数多くいらっしゃいます。

では、後継者について、具体的にどのようなお悩みがあるのか、ということについては、次の記事で詳細に考察するとして、今回は、それ以外のお悩みについて考察したいと思います。

経営についての公私混同

まずは、「経営についての公私混同」です。

会社は、会社法の理屈の上では、「所有」と「経営」が分離されています

つまり、株主と取締役は、一致しないのが建前です。

たとえば、三菱商事を見てみると、三菱商事の株主は、我々のような個人投資家や金融機関など、多岐に渡ります。

しかし、三菱商事の代表取締役は株式を所有していないか、所有していたとしても、株主総会の決議に影響を与えないほどに少数でしょう。

株主は、他人である取締役が悪いことをしていないか、監査役制度などによりチェックします。

これにより、会社は、資金を拠出する「株主」と、経営のプロである「取締役」が、役割を分担しながらも、適正に運営されていくのです。

とくに、三菱商事のような上場企業であれば、上場審査において、このような「所有」と「経営」が分離しているか、一般株主が安心して出資できるかどうかを厳しくチェックされます。

 

では、中小企業について考えてみると、株主と取締役が一致していることの方が一般的です。

これは必ずしも悪いことではなく、所有と経営が一致していることによって、経営者は必死になって、責任をもって経営にあたることになるのです。

ただし、所有と経営が一致していることによって、上場企業のように、経営へのチェックが正しく働かないのも現実です。

「オレの会社をオレが好きにして何が悪い?」というのが経営者の本音でしょう。

たとえば、経営者が、会社のお金で自分の車を買っている、逆に、会社に自分の資金を会社に貸付けている、とか、よくある話です。

 

普段の経営では、このことが大きな問題になることは、それほど多くないかもしれません。

しかし、経営者を引退する場合には、これらの公私混同は解消しなければなりません。

そうでなければ、後継者が会社を承継したのちに、トラブルになることは必至です。

事業承継をする、ということは、株式上場と同様に、「オレの会社ではなくなる」ということなのですから。

 

また、公私混同を解消することは、連帯保証債務を解除するための要件の1つになっています。

金融機関からすれば、貸し付けた資金で、経営者の好き勝手ができる会社には、連帯保証債務を付けることでリスクヘッジをせざるを得ません。

逆に、貸し付けた資金を、適性に会社業務につぎ込んでいる、となれば、必ずしも連帯保証債務を求めなくてもよい、との判断もできます。

本人からの承諾が得られない。

経営者へのアンケートですので、「本人からの承諾が得られない」ことが上位ですが、もし、逆に後継者へインタビューをしたなら、「経営者が社長を渡してくれない」が断トツで1位になるでしょう(笑)。

では、なぜ、本人からの承諾が得られないのでしょうか?

本人の経営者としての素質・能力が足りない以外に、以下の要因が考えれらます。

 

1つめには、会社の経営状況が芳しくない、また、現経営者のワンマン経営で、その経営を引き継ぐことに躊躇しているのではないでしょうか。

その場合には、事業承継前に、会社の「磨き上げ(経営改善)」をする必要があります。

 

2つめには、連帯保証債務を承継することを躊躇していることが考えられます。

その場合には、さきほどのお話とも重なりますが、連帯保証債務の解除も検討しましょう。

まとめ

親族内承継における最大の問題は、後継者の素質・能力です。

以下、税金、経営者の公私混同、後継者が承継を承諾していない、ことです。

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